心をこめたお手紙ありがとう。 彷徨い歩く心を除けば、いたって元気にしています。
そう、あれからの私は「神の遺し擱いた気象」のことをずぅーっと考えていました。
その神とは奇しく可畏き欲望です。地に涌き、絶え間なく飛翔する鮮烈な魂の震動です。
道理を離れて思うところの熄むにやまれぬ 道 です。 明暗ふたつながら合わせもち、
ひそかに依り来っては夢に顕つひたぶる心です。 そう、非合理の神性です。
匿されたもの、言挙げせぬもの、決して試してはならぬものです。
それ故にこそ、気懸かりで眩しい切望となって私の心を捉えているのです。
うつしみを添えて深く遠くを思い、頬ふく風にさえ愛しい行き交いを観じ、琴の音の忍ぶ
神の斎庭に畏れ伏す巫女さながらに、焚きくゆる香の揺らめきにさえ狂おしく慄きつつ
「記された言葉」「匿された影」を深く熱く偲び、その「在るであろう様」を心から希求い、
静かに「神のあえかな気象」を語りはじめようと想い定めています。
春の気配を感じながら、慕わしいあなたのもとへ
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