ベルリンでの展覧会を終え、誇らしい気分で乗り込んだはずの飛行機の座席には、
虚脱感とともに、"深いもの想い"が潜んでいました。
「・・・・ここまではやれた、でも、ここから、どうすれば・・・・・・・、」
当惑した思考は、やがて真冬のシベリア上空を夢の中に落ちてゆきました。

・・・・・眼前には、おおどかに海は横たわり・・・・・、
記憶の深層に封印されていた"初々しい光景"は、
みぎわから立ち昇る"エーテル"のごとく、爪色の空に揺らめき放たれて・・・・・・・・・・・、
すでに表出された"形態"は、明滅しながら、それ自体の内部へと完了して・・・・・・・・、
私自身はというと、ただ"風"だけをそこに感じて・・・・・・・・・、

そのとき私は泣いていたのです。

親しい友人への手紙より

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