爪色の雨 サトウ・ハチロウ
爪色の雨の午前(あさ)
まつ毛のながいその女(ひと)は
ビューティー・スポットを
入れては消し・・・・・
消しては入れ・・・・・
鏡は
爪色の雨と泪に曇りぬ
爪色の雨が降ります
あじさゐの花がけむります
誰にも知られないやうに
お風呂場の壁が濡れて行きます
鉛筆色の角出して
まいまいつぶろが見てゐます
爪色の雨の降るたびに――
あなたと旅した
あの頃を・・・・・
あなたのお下髪(さげ)を
ほほゑみを・・・・・
耳の産毛を
はじらひを・・・・・
雨のなかで指さした
あの山脈(やまなみ)をあの爪を・・・・・
爪色の雨の降るたびに――