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昭和39年の新潟地震を僕は経験した。

市内万代橋東詰めに建っていた新潟交通の二階の診療所にいた。

午後の回診のベルがなり終わって、まもなくのことであった。

何の前触れも無く、僕の足はすくわれ、体は宙を飛び、3メーターほど前方に堕ちた。

薬所棚の薬の瓶も僕と同じ軌跡をとって、床に飛散して、破裂しながら床を滑って行った。

まさに直下型の大地震であった。

中庭の駐車場では大型観光バスが何台も踊っていた。   と、次の瞬間大きな駐車場の鉄骨の

屋根がバスを押しつぶしていた。

堕ちる瞬間を揺れながら窓越しに見ていた。

でもその音は聴いていない。いや、聞き取れなかったのだろう。

あたり一面物という物が音を立てていたのだから・・・・・・今にして想えば、無声映画の一場面を視て

いるようだった。

揺れが収まったのを見計らって、非常階段から地上に降りて、これまた驚いた。

一階部分が一メートルほど沈んでいるではないか。

従業員は右往左往しているのを窓から下に見下げるような変な感覚に囚われながら、第二の振幅を

感じたとき、足元には黒い水が吹き上げてきていた・・・・・。

45年以上前の出来事なのに記憶は鮮烈である。

こうして思えば、今回被災された方々の瞼に残る無念の想いは如何ばかりであろう・・・・。

唯々、偲んで、静かに想いを寄せてゆくしかできない自分がここに居る・・・・・・。