アトリエの桜が散っています。
もう、植えてからかれこれ二十年にもなる木々です。
大きく育って春を楽しませてくれています。
「 ひさかたの ひかりのどけき 春の日に
しずごころなく 花のちるらむ 」 紀 友則
私は花が咲き始めるといつもこの歌を想い出します。
そして、花の散る日を心待ちにします。
桜の散華するその真中に立つと、心が高振り、頬打つ花びらの感触は
言い知れぬ興奮を身の内に引き起こします。
その瞬間に魅せられているのです。
桜吹雪の只中には なにか得たいの知れぬ気配 が潜んでいて
震えながら見上げている私の身にはっきりと添うて来る ” もの ”
が感じられるのです。
もはや私の心は 「しずごころ」 どころではないのです。
ただただ震え戦きながら、枝先を離れて飛翔し、渦なして乱舞してゆく花びらの影を
陽に透かして見上げているばかりです。
幾万人もの先達が同じ思いでこの散華を見てきたことでしょう。
「 わが胸を のぞかば胸の くらがりに
桜森見ゆ 吹雪きゐる見ゆ 」 『桜森』 河野裕子
と歌った歌人もいます。
今年も私は確に 「 花 」を見ました。

コメントする